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 食卓のある部屋へ入ると既に王と王妃は席についていた。 「おはよう、アンナ」  声をかけられるとアンナは手鏡からちらりと視線を王と王妃に落として、 「おはよう、お父様。お母様」  と愛想のあの字もない顔で挨拶をすると席に座った。手鏡をテーブルの定位置に置く。 王と王妃は、いつものようにため息をついて目を合わせた。  アンナは物心のついた頃から自分以外へ全く興味を示さない。いつも鏡を手にし、自分の容姿に心を奪われている。確かにアンナの美貌は遠く離れた国々に知れ渡るほどのもので、初めて目を合わせたメイドが失神するといったこともよくあった。美しすぎるのだ。それがアンナを自分以外を愛せない人間にしてしまった。  いくら美しい姫であっても、男性に興味も示さず、結婚なんてとてもしてくれそうにない娘に、王も王妃も困り果てていた。しかもアンナは一人っ子。このままでは国が滅んでしまう。王の悩みは深い。
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