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 春の柔らかな日差しがアンナのプラチナブロンドの髪に降り注ぎ、煌めく。まるで髪そのものが発光しているようだ。  翡翠色の瞳は光を受けて薄い翠に輝く。  バルザックはそんなアンナに暫し見惚れていた。非の打ち所がない美しさとはこういうことを言うのだろう。  一方アンナは相変わらず手鏡を見ていた。 「ああ、アンナ。外の太陽の光をうけたあなたは眩しいくらいに美しいわ!」  うっとりと鏡を覗き込む。  アンナの美しさにバルザックは突然飛び込んできた何かへの対応が遅れた。だがアンナにぶつかる前にバルザックが足払いをかけ、それは、 「ギャフン」  と奇妙な声で鳴いた。 「なあに、騒がしいわね。バルザック何かあったの?」  バルザックがその何かを持ち上げてみると毛の長い犬のようだ。  それにしても。  アンナはその犬の顔を見て大いに驚いた。 「これは、犬、よね? 眉はさがり、目も下がり、鼻が低くて口はへの字。なんて不細工な犬でしょう。こんな顔の犬は初めて見たわ」  そのときだった。 「不細工不細工言われると傷つきます。私はアンナ姫に会いに来たヒースと申します。貴女ほど美しい方は初めてだ。貴女がアンナ姫ですね?」  驚いたことに不細工な犬は言葉を喋ったのだった。 「そうよ、私がアンナ。あなたはヒースというのね。犬にしては立派な名前だこと」  アンナは珍しく手鏡を覗くのをやめて、ヒースと話した。
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