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「アンナ姫、貴女は自分にしか興味がないとか。私はこの通り不細工な犬ですが、貴女の話し相手になれないかと思って来ました」  不細工な顔で一生懸命言う姿がまた可笑しく、アンナは鈴の音のような声をあげて笑った。 「犬の貴方が私の話し相手に? 可笑しなことを言うのね?」  バルザックは横でハラハラしながらアンナとヒースのやり取りを見守る。 「でも、ヒース、貴方のその顔、見ていると可笑しいわ。貴方のような不細工な犬は初めてよ。私が飽きるまでなら、城に留まり、話し相手になることを許すわ」 「ありがたき幸せ」 「バルザック、ヒースを連れてきて。疲れたわ。城に戻りましょう」  アンナはそう言うと、手鏡に自分を映した。 「ああ、アンナ。疲れていても貴女は綺麗だわ」  鏡に映る自分に話しかけ、ふと思いついたようにその手鏡をヒースの方に向けた。ヒースの情けない容姿が手鏡に映ると、アンナは笑い出す。 「そうよね。鏡に映しても不細工は不細工よね」  ツボにハマったのか、アンナは城に入るまで笑い続けた。
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