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 楽しげに帰ってきた我が子に、王と王妃は何か進展があったに違いないと喜びながらアンナとバルザックをむかえた。  そして、バルザックの抱いているものに目をとめた。 「バルザック。それは何だね? 犬……のように見えなくもないが」  王がバルザックに問うと、 「彼はヒースと言うらしいわ。私の話し相手に立候補してきたの。面白いから城に暫く住まわせてあげて」  とアンナが返した。 「アンナ、話し相手と言っても、これは犬ではないか」  王が怪訝そうな顔でアンナとヒースを見比べる。 「ああ、それなんだけど、彼は喋るのよ」 「挨拶が遅れました。私はヒースと申します。これからお世話になります」  王と王妃は顔を見合わせ、目を瞬かせた。  内心、こんな不細工な犬のどこがいいのか分からなかったが、アンナが珍しく興味を持っている。 「なら、彼の身体をまず洗わせてからにしなさい。不細工で泥んこでは救いがない」 「それはそうね。 誰か。あ、貴女でいいわ。ヒースを洗ってから私の部屋に連れてきて」  言われたメイドの一人はバルザックの手からヒースをもぎ取ると、浴室の方へと連れて行く。それを見てアンナはさっさと自室へ上がって行ってしまった。  所在無さげになった美青年バルザック。 「すまない、バルザック。これに懲りずにまたアンナと散歩をしてくれないかね」  王がバルザックに耳打ちする。バルザックは複雑な思いで頷くしかなかった。
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