第1話 いつの間にか

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みんな買ってた? この本を? ちらっと隣を見ると、間野さんと目が合う。 どうやら、間野さんも同じ事を、考えていたらしい。 「しばらくして売れ足が落ちても、根強いファンの人がいてね。そういう人達の為に、たまに入荷してるんですよ。」 「そんな、少数派のお客様の為に……」 私がボソッと呟くと、背中に間野さんからの、強烈なパンチが入る。 「はははっ!分かりますよ。そんな一部のお客様に、いつ売れるか分からないような本をね。でもね、お嬢さん。その本を手に取って、レジまで持って来て下さる人の顔がさ。『遂にこの本を、見つけた!』ってなモノなのよ。それを見ると、堪らなくて。」 年配の人の話を聞いて、思わずその状況が、目に浮かぶ。 「あっ、そろそろ閉店のお時間ですね。」 間野さんが、周りを見ながらそう切り出す。 「ああ、そうですね。遠いところ、わざわざご苦労様です。」 「こちらこそ、遅い時間にお邪魔しました。」
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