第1話 いつの間にか

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「よし、次行くぞ。」 「はい。」 忘れていたけど、数件回らないといけないんだっけ。 またあのファイルを、ペラペラと捲った。 「斎藤。」 「あっ、はい。」 ファイルをカバンの中に入れ、間野さんに付いて行き、自動ドアを通ろうとした時だ。 「斎藤さん。」 「はい。」 呼び止められ、振り返ると矢田さんが、息を切らしながら、私の腕を掴んでいた。 「よかった。まだお店の中にいて。」 私は矢田さんの背中に、そっと手を当てた。 「どうしました?」 「さっきは工藤さんの話で、盛り上がっちゃって忘れてたんですけど。」 その他にも、新人作家のデビューの話もしたのですが。 「発注!発注、お願いしたくて。」 「発注?」 「いつもはFAXでお願いしてるんですけど、発注担当者がミスしちゃって。明日の予約分、取るの忘れてたんです。」 予約分!? そ、それは大きなミスなのでは?
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