第1話 いつの間にか

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「へえ。聞いた事あるのか?」 「いいえ。聞いた事ありません。」 「そうか。昔のタイトルかな。うちに在庫あればいいな。」 「はい。」 売れなくて引き取った本の在庫が、倉庫にあるはず。 あそこには、大抵のタイトルが置いてある。 「さあ、次行くぞ。」 「はい。」 私はその走り書きのメモを、ファイルに挟んだ。 「斎藤。」 「はい?」 間野さんは、訳も分からずまた薄い封筒で、私の頭を叩いた。 「そういう依頼が来たら、直ぐ様、会社に連絡して誰かに探させる。」 「今、頼むんですか?」 「探してなかったらどうするんだよ。ついでに今から行く書店にも、在庫がないか、一応聞く。」 「はい。」 さすが営業マン。 そこまで考えるんだと感心しながら、会社に電話をした。 『はい。東洋出版、営業部です。』 「お疲れ様です、斎藤です。」 『斎藤さん?ああ!異動したばっかの!』
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