第1話 いつの間にか

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第1話 いつの間にか

「でもね、工藤さん。ブライダル物ばかり3冊持ってきて。」 「ブ、ブライダル!?」 「しかも主人公がしつこくプロポーズされるモノばかり。そんなに結婚したいんだ、と心の中で思いましたよ。」 工藤さんが…… あの工藤さんが? あの地味で、合コンや男とか興味無さそうな工藤さんが!? 人は見かけによらないものだ。 「ところで斎藤さんは、結婚のご予定あります?」 「えっ?……今のところ、ないですが。」 「よかった。また結婚結婚言い出すような担当者だったら、どうしようかと思いました。」 「はははっ!」 こりゃ、まかり間違って結婚が決まっても、ギリギリまで言わない方がいいな。 ここらで、話題を変えよう。 「あっ、そうだ。お名前、伺ってませんでしたね。」 「そうでしたね。この書店でレディースコミックを担当したおります、矢田と申します。」 そう言って頭を下げる仕草は、落ち着いた色気を感じさせるものだった。
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