75人が本棚に入れています
本棚に追加
第1話 いつの間にか
「でもね、工藤さん。ブライダル物ばかり3冊持ってきて。」
「ブ、ブライダル!?」
「しかも主人公がしつこくプロポーズされるモノばかり。そんなに結婚したいんだ、と心の中で思いましたよ。」
工藤さんが……
あの工藤さんが?
あの地味で、合コンや男とか興味無さそうな工藤さんが!?
人は見かけによらないものだ。
「ところで斎藤さんは、結婚のご予定あります?」
「えっ?……今のところ、ないですが。」
「よかった。また結婚結婚言い出すような担当者だったら、どうしようかと思いました。」
「はははっ!」
こりゃ、まかり間違って結婚が決まっても、ギリギリまで言わない方がいいな。
ここらで、話題を変えよう。
「あっ、そうだ。お名前、伺ってませんでしたね。」
「そうでしたね。この書店でレディースコミックを担当したおります、矢田と申します。」
そう言って頭を下げる仕草は、落ち着いた色気を感じさせるものだった。
最初のコメントを投稿しよう!