受験生

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受験生

朝、駅のエレベーターに飛び込んで来たのは、眼鏡の男子高校生でした。 閉まりかけたドアを開けて。 私を始め、先に数人が乗っていたエレベーターです。 大きなリュクにマフラーをグルグルに巻いていました。眼鏡はちょっと曇っています。 何かブツブツ言ってるので、アブナイ人かとちょっと身構えていました。だって狭い箱の中だから。 一緒に乗ってた人たちもきっと同じ気持ち。 その時、シンとしたエレベーターの中に彼の呟きが聞こえました。 『受験票持ったな?持った』 えっ?これからか? 箱の中にさっきと違う緊張感が生まれました。きっと皆さん聞こえた。 ドアが開いた途端、彼が飛び出して走って行きます。人混みを避けて、あっという間に小さくなる背中を見送りながら、心の中で言いました。 「あと、5分早く起きろよ、そんな日くらい」 『開』のホダンを押して、箱から数人が降りるのを待っていました。軽く頭を下げて降りて行く大人たちは、きっとみんな私と同じ気持ち。 『あと5分・・』 そして 『頑張れ!』 よく狂うJRのダイヤが、今朝は乱れませんように。
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