おじいさんとトイプードル

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おじいさんとトイプードル

通勤時間を少し変えた最近、すれ違う方々の顔ぶれが変わりました。朝の時間というのは皆さんだいたい同じパターンで過ごしていらっしゃるのでしょうね。バスの時間を一本変えただけで風景は新しくなります。 バスを一本遅くしてから、出会う方のお一人がトイプードルを散歩させているおじいさんです。 かなりご高齢。ゆっくりゆっくり小さな一歩を重ねられます。そして小さなトイプードルを連れていらっしゃいます。 散歩用のゲージもついています。お二方の歩くペースはほぼ同じなようで、何人もの人が追い抜いて行きます。 申し訳ないけど、私も追い抜きます。 初めてこのお二方を追い抜いた時には気づかなかったことがあります。 気づいたのは、お休みの日。遠い方のコンビニに買い物に行って帰ってきたときでした。 先日は後ろからお二人を抜かしましたが、その日は前からすれ違う形になったから。 いつもどおりゆっくり歩くおじいさんは、その日は近づいてきます。トイプードルくんももちろん。 と、何か違和感が。お休みのその日は眼鏡もコンタクトもしていませんでした。0.1以下プラス乱視状態です。 なんだろ、違和感。 近づいてくるうちに増しますが、歩道ですれ違う方をじーっと見るのも失礼ですし、立ち止まる時間帯ではありません。お休みなのは私だけです。 なんだろ?そう思ううちにお二方は近づいてきます。いつものペースです。 すれ違う瞬間、一生懸命目を開いて、でもじっと見ることがないように、動体視力のマックスで!と意気込んでいました。 後ろからはいくつもの革靴の靴音が聞こえています。私が進む方角にある会社の方々がバスから降りて歩いてきているのでしょう。歩道で立ち止まることはできません。 いよいよ彼らが近づいてきました。私は視線だけでトイプードル君を。 血? 少しだけ歩調を落としましたが、止まれない。進まなきゃ、後ろからくる人の邪魔ににならないように・・。 すれ違ったあともお二方はのんびりと歩いて行きました。 少し広いスペースで横に避けて、バスから降りた人々に道を譲りました。 振り返ると、おじいさんとトイプードルくんは同じペースでゆっくりと進んでいます。 なんだったんだ?赤だけはわかった。だから咄嗟に血と思った。鼻血? 私は犬飼ったことない。鼻血出すの? でも普通に歩いてた。 そもそもおじいさんは自分の相棒のトイプードルくんが鼻血だしてること知ってるのか? いやいや、鼻血と思っただけで違うよ、きっと。よく見えてないんだし。 もしかしたらスカーフかもしれない。 でも、おじいさん、一緒にいるワンコにスカーフする前に、昭和レトロな肌着のシャツとステテコをTシャツとステコにしよう。 いやいや、スカーフじゃないかも。 家に帰ってトーストを食べ終わって出掛ける準備をしてる間も考えてみましたが、スカーフ以上の考えは出てきませんでした。
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