2・大晦日の夜

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「ごめんな、友麻。パパは……」 「いいよ、お仕事だもんね」  私は作り笑いをしてパパの言葉を遮った。 「今日はママと2人で紅白見るから」  親子3人で、それが叶うと思った途端にいつもこうだ。期待しなければいいのかな……。 「ごめんな、友麻……。ママも行かなければいけないんだ……。日勤のスタッフが帰ってしまったから、人がいなくて……」 「えっ……?」    ガッカリしているところに追い打ちをかけられて、私の目から涙が溢れた。 「だって、クリスマスもそうだったよ」 「友麻」  ママが厳しい口調で私の肩を掴んだ。 「お父さんはね、これからお腹の中で育ち過ぎた赤ちゃんを取り上げる手術をするかもしれないの。そういう時に友麻を心配するようなことがあったら大変なのよ。分かるでしょう?」  知っているよ、パパが人の命に関わるお仕事をしていることも、好きで約束を破るわけじゃないことも。  だけど、どうしていつも私ばかりが我慢しなければいけないの?  でも、そう言って困らせてはいけないのも知っている……。 「分かる。わがまま言ってごめんなさい」  私は謝るしかないの。何も悪いことなんてしてないのに。それでも、笑って安心させないといけないから笑顔を見せた。
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