6人が本棚に入れています
本棚に追加
(3)
あれから何年も経った。
本当は隆くんの大学に行きたかったが、私の頭では到底及ばず……自分の身の丈に合った大学に入り、自分の身の丈に合った職と巡り合い、この春ついに社会人になる。
隆くんの家族とは、特に連絡を取ることもなかったから、私たちはもう赤の他人同然だった。
顔を合わせなくなったら人間薄情なもんで、あんなに毎日思っていたのに、今じゃたまにしか思い出さなくなった。いや……逆に言えば、『たまに』だったら思い出してしまう。
ふと淋しくなったときに。
慰めてほしいときに。
私の心の中にはまだ隆くんがいた。
最初のコメントを投稿しよう!