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氷見野はキッチンへ向かい、冷蔵庫から缶ビールを取った。缶ビールの蓋の開く音が幸せそうな食卓に響いた。
「お疲れ様でした」
微笑みながら言って、夫の前に置いたコップにビールを注ぐ。
「ありがとう」
「ずいぶんとお疲れですね」
「これだけ暑いとな」
夫は苦笑いを零し、2つほど開けていたカッターシャツのボタンを更に2つ開けていく。
氷見野は缶ビールをコップの横に置くと、夫の前に座る。
2人手を合わせ、
「いただきます」
「いただきます」
夫に続いて氷見野が繰り返す。
すると、氷見野は夫に視線を向ける。夫はアジフライに手をつけ、口に運んだ。それを見て、氷見野は箸を持ち、食事を開始する。
「今日はずっと家だったのか?」
夫は料理に視線を向けたまま氷見野に聞く。
「いえ、今日は洗濯洗剤を切らしていたので、朝にお買い物をしてきました」
氷見野は笑みを絶やさず、ゆったりとした口調で言う。
「そっか」
氷見野はチラチラと夫を見る。夫は氷見野の視線に気づかず、ビールを飲み、料理を食べていく。
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