ゆりかご

7/16

36人が本棚に入れています
本棚に追加
/2027ページ
 今日も日射しは強い。小雨が一度降ったものの、すぐに太陽が顔を出した。  明日は大雨の予報を聞いているため、今日のうちにできるだけ今ある洗濯物を干そうと励む。  シルバーの携帯が軽快な音を立てる。氷見野は洗濯物を干す手を止め、庭に出られる窓際の床に置いていた携帯を取った。  中学の頃から仲の良い女友達、加藤志穂梨(かとうしほり)からだった。少し驚きつつも、氷見野は電話に出る。 「もしもし、優、元気ー?」  間延びした緩い声が耳に入ってくる。 「うん、元気元気。どうしたの? 突然電話くれるなんて」  氷見野は嬉しそうに声を弾ませる。 「今度同窓会が地元で開かれるって聞いてさ、優も来れないかなって思って」 「いつくらいになりそう?」  氷見野は部屋に入り、腰丈の収納ラックの上にあるメモ用紙に近づき、横に添えられたボールペンを取った。 「えっと、9月18日の15時だね。優って今神奈川だよね?」 「うん」  氷見野はメモしながら答える。 「どう? これそう?」  後ろ髪を引かれそうな声で尋ねる加藤。 「そうねぇ……」  氷見野は迷いながら言葉を漏らす。
/2027ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加