抱きしめられるこのいまを

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「ていうか、地面揺れたでしょ」 「え?」 「あんた、マジで言ってる?」  ラピはオルビアの引きっぷりに少し傷つく。 「まあ無理もない。デストラと高速戦闘やってたわけだからな」  サモンはこれでもかというくらいに口角を上げて笑う。 「これをやったのが、その飛行物体だって言うんですか?」  氷見野はまだ理解が追いついていないなかったが、状況を必死に把握しようとしていた。 「そうとしか考えられない」 「どんな兵器だよ。地殻変動を起こせる武器とか……」  オルビアは恐怖の滲んだ苦々しい顔をする。 「その怪奇な地震のせいで怪我人が多数出ました。更地の割合が増えたところに運び屋が現れています。飛行物体に向かっていること、現れたタイミングと状況から察するに、その運び屋の中にいるのは、島崎いずなの可能性が高いです」 「まだ救出できてないってことは苦戦してるのか?」  サモンはチャペルトンに近くなるほど増えていく障害物をよけながら、速度を落として道を進んでいく。 「大群だからって苦戦するんですか? デストラやヴィーゴくらいたくさんいるとかならまだしも、ブリーチャーレベルの生物で苦戦しますかね?」  ラピは怪訝(けげん)そうに尋ねる。 「そうね。ラピの言うように、それだけなら苦戦しなかったでしょうね」 「やっぱ、あの飛行物体が?」  フォスター小官はオルビアの問いに相槌(あいづち)を打つ。
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