ゆりかご

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 逡巡(しゅんじゅん)した夫は、静かに口を開いた。 「断ってくれ」 「理由を、聞かせてもらえませんか?」  氷見野はむなしい回答をした夫に、煮え切らない表情で問う。 「聞きたいのは俺の方だ。なんで同窓会に行くんだ?」 「友達と久しぶりに会いたいと思いま」 「それは家庭にどう役に立つんだ?」  夫は真顔で食い気味に問い詰める。氷見野は口に昇ってきた嫌な感情を呑み込む。 「私にも、休暇をいただけませんか? 帰ってきてから、その分頑張ります」 「君の休暇はいつもあるじゃないか。ほとんど家にいるんだから」  夫の顔は何を言ってるのかわからないと訴えている。 「家事は休暇ですか?」 「そうは言わないけど、君は手際がいいから、時間くらいたっぷり余るだろ。一週間のうちに余った時間を総計すれば、休日2日分にはなると思うけど?」
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