雷機の少女

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 いっそのこと溶けてなくなりたい。そう思ってしまいたくなるほど、輝く太陽は容赦なく光を差し続けている。  玄関を出て、仰いだ空に目を細めた。その間に玄関の明るい茶色の扉が勝手に閉まり、カチッと音を立ててカギをかける。 「今日の天気は晴れ。気温44℃。こまめな水分補給をしましょう」  手首のライフモバイルウォッチが穏和な口調でお知らせをしてくれる。ライフモバイルウォッチをつけた片手でひさしを作り、家の敷地の駐車スペースに入る。屋根のある駐車スペースに入っただけでも幾分過ごしやすい。  氷見野がいつも乗る車は水色の車だったが、車体の形を保ったまま白いゴムに覆われていた。  氷見野は車のキーについているボタンを押す。すると、シューという空気の抜ける音を出しながら、覆っていた白いゴムが車体の底に入っていく。  4つのタイヤが姿を現すが、タイヤは地面から浮いている。車体の底の中央の小さな穴から支柱が伸び、平らな円形の支底盤(していばん)が地面をついて車を支えていた。
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