36人が本棚に入れています
本棚に追加
/2022ページ
「わかったよ。ただし入り口までだ」
「それがいい。そうと決まればさっさと行こ……あ?」
カメラが左にぶれる。
「なに?」
シーラが突然言葉を詰まらせた男の様子に訝しむ。
「ピスタ?」
鬼平はカメラを持ったピスタに声をかける。
「いや、今何か見えたような……」
「え?」
シーラは振り返って確認する。
「何も、なさそうだけど?」
鬼平も確認するが、広がる大地に気になるものはない。
「なんだ、ガス吸い過ぎておかしくなったか?」
カルアは息を吹かすように笑う。
「おかしいな……。確かに、デカい影が見えたんだが」
「はっ!?」
カルアの表情が一変した。体を強張らせ、後ずさる。ピスタに向かって視線を向けた途端、2人とも言葉にならない声を漏らした。
「お、おい、なんだよ」
ピスタは3人の様子に煽られ、声を震わす。
「ヤバい、ヤバいって!!」
「逃げろ! ピスタ!」
鬼平の尋常じゃない叫びが響く。それを機に、カルアとシーラが走って逃げ出した。
「グぅ……」
くぐもった声を漏らして、ピスタはいびつな地表に倒れた。
画面は一瞬乱れ、上下反転した地平線を映す。恐怖した3人の叫び声を最後に、映像は途切れた。
最初のコメントを投稿しよう!