世紀の瞬間

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「わかったよ。ただし入り口までだ」 「それがいい。そうと決まればさっさと行こ……あ?」  カメラが左にぶれる。 「なに?」  シーラが突然言葉を詰まらせた男の様子に(いぶか)しむ。 「ピスタ?」  鬼平はカメラを持ったピスタに声をかける。 「いや、今何か見えたような……」 「え?」  シーラは振り返って確認する。 「何も、なさそうだけど?」  鬼平も確認するが、広がる大地に気になるものはない。 「なんだ、ガス吸い過ぎておかしくなったか?」  カルアは息を吹かすように笑う。 「おかしいな……。確かに、デカい影が見えたんだが」 「はっ!?」  カルアの表情が一変した。体を強張らせ、後ずさる。ピスタに向かって視線を向けた途端、2人とも言葉にならない声を漏らした。 「お、おい、なんだよ」  ピスタは3人の様子に(あお)られ、声を震わす。 「ヤバい、ヤバいって!!」 「逃げろ! ピスタ!」  鬼平の尋常じゃない叫びが響く。それを機に、カルアとシーラが走って逃げ出した。 「グぅ……」  くぐもった声を漏らして、ピスタはいびつな地表に倒れた。  画面は一瞬乱れ、上下反転した地平線を映す。恐怖した3人の叫び声を最後に、映像は途切れた。
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