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店内にいる他のお客の中には焦りを感じない人もいた。
男が怖がる彼女に「ウォーリアゴッドがいるんだから大丈夫だって」と、女性の肩に腕を回しながらゆっくりとエレベーターに向かっている。
エレベーターを使う人は少なくなかった。氷見野はエレベーター前で待っている人だかりを横目に駆けていく。なんで待っていることができるんだろうと違和感を覚えながらも、氷見野は目的の階段へ辿りついた。すると、後ろで悲鳴とガラスの割れる音が混迷して響く。
屋上へ向かおうとしていたお客は思わず立ち止まる。氷見野も立ち止まり、とっさに振り向く。
店の大きな通路の突き当たりに焦点が定まる。赤黒い肌とグロテスクなフォルム。大きく裂けた口が突き出て、禍々しい黄金の瞳がギトリと妖しく光を持っている。テレビなどで観てきたブリーチャーが、整然な店内で姿を見せた。
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