平和は唐突に崩壊する

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 始まりは26年前になる。各国の宇宙開発事業がいつの間にか激的に発展しており、そしていつの間にか金星に移住できるなんて話が、テレビやネットなどでにわかに盛り上がっていた。  金星移住計画の第一歩として、日本の乗組員も搭乗する宇宙飛行船が金星に着陸するという話題がテレビなどで特集されるようになった。加熱する新たな未来への期待は、誰かにとっては興奮せずにはいられないようだ。  金星への着陸は成功した。歓喜に沸いたその後、乗組員との交信が途絶えたという一報が入る。  心の底から乗組員の身を案じていたのは、大偉業の瞬間を待ち望む宇宙の神秘に魅せられている人や宇宙事業に携わる人ぐらいで、大概の人はそんな歴史的な一歩など、自身のささやかな日常に何ら影響はないと思っていた。  金星に着陸した宇宙船に関するニュースは、数ヶ月の間に続々と耳に入ってきた。浮き沈みする話題はいつしか当たり前になり、次第に影を潜めてしまう。
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