親心

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 それから2週間が経った。そろそろ就職しないといけないと思い、就職センターで職を探す。福利厚生が整い、貯金ができそうな給与が見込める。いくつか候補を絞り、適性検査や一般常識テスト対策のために書籍を買い、復習に頭を使う日々を送っていた。  カフェで勉強した後、ドライヤーを買いに家電量販店へ足を運ぶ。品揃えは地上よりも少し劣るが、さして気にはならない。ドライヤーは氷見野の自宅にあったが、電源を入れてもつかなくなってしまったのだ。仕方なくその日は自然乾燥となった。  目的のドライヤーと液晶画面クリーナーなどを買い、レジに向かう。テレビ売り場を通った時、画面が午後のワイドショーを映していた。氷見野は立ち止まってテレビに目をやった。  ブリーチャーが北海道の漁港に出没し、市場を襲撃したようだ。事前にブリーチャーの接近が観測されたため、住民や市場関係者の避難が速やかに行われ、転倒による怪我人が数名に留まった。  ブリーチャー警戒特区に配置された初動防戦部隊が陸への進入を防ぎ、駆けつけた攻電即撃部隊(ever)により駆除されたと説明するアナウンサー。氷見野は思いつめるような表情でテレビの画面を見つめていた。
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