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「えーっと」
だんだん事態が飲み込めてきた。
──俺=凄い超知覚能力者ってことになってる? で、その能力を生かしてバス襲撃中の魔物とトツゼン現れた魔物とを相討ちに持っていったと??
祐介は倒れそうになった。
「と、とにかく頭を上げてください」
祐介はなんとかそれだけを口にした。
「ケジメだけはきっちりとつけさせて貰いますんで」
ようやく頭を上げた金岡が言う。そして佑介をひたと見据える。別に悪気があるわけでもないのだろうが、するどい眼光と薄い眉が祐介に緊張を強いる。
──無理だ、本当のことなんて言えない。
佑介は震えそうになる膝に意識を向けないようにして、なんとか快活を装う。
「か、金岡さん、ケジメなんてやめてください。別に大した事をやったわけじゃないです。もちろん気にもしてませんし……」
祐介の心臓がバクバク鳴っている。
──上手くできてるだろうか? ケジメなんて冗談じゃない。そんなことさせて万一ばれた時が怖すぎる……
祐介はなんとかこの話題を終わらせたかった。
金岡の顔が一瞬引きつったように見えた。
──あれ、しくじった?
「……なんてぇ器のでデカさだ」
金岡は独り言のようにそうつぶやいてから次ははっきりと続ける。
「さん付けも敬語もよしてください。タメ口にアラタって呼び捨てで頼んます」
「あ、はい」
「はいじゃくて、うんで頼んます」
「はい、じゃなくて……うん」
「俺ぁ今後は中津さんのためになら何だってぇやらせて貰いますっ」
金岡は再び深々と頭を下げた。
その後ろではミエが笑いを堪えてやりとりを見守っていた。
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