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『破損箇所の修理のため、少しの間バスを停車します』
スピーカーから割れた声が響いた。その音量にやられて皆が顰めっ面で耳を押さえた。元々の声が無駄に大きいモズには車内放送は不要な設備だ。
路肩に寄せることもなく、道路のど真ん中にバスを停めると、モズは身軽な足取りで車外に出て行く。そして溶接道具などを使って、ガラスが割れた二つの窓を厚いステンレス板で塞いでいった。まるで魔法のような手際だ。さらに、佑介にはよく分からない格子状の線や星型が書かれた札が何枚もベタベタと貼られる。
「なんでステンレス板とか溶接道具なんて用意してあるんだろう」
祐介が疑問を口にする。
「バス、ぶっ壊れる前提なんすかね」
アラタがそう言った。
「あのお札、道教のにも似てるけど、きっと陰陽師仕様ですね」
ミエが指差し、これにもアラタが応える。
「あの心斎ってぇ、おっさんの書いたヤツなんだろ」
祐介は皆の紹介の時に場を取り仕切っていた橋 心斎のことを思い出した。もちろんこのバスにも乗り込んでいるが、祐介はまだ言葉を交わしていない。
確か風水師だと名乗っていたはずだ。映画などで見る陰陽師と、Dr.コパのような風水師に接点が見つけられなかったが、わざわざ質問するほどのことでもないなと、祐介は黙っていた。
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