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三人が話しているうちにも、モズは手早く修理を完成させた。
『えー、ながらくお待たせしましたぁ。バスは引き続き、魔歪点の探索を進めます』
やはり公害のような音量でモズはそう放送した。
座っていた座席の窓が塞がれてしまったこともあり、祐介とミエはアラタが座っていた中程の席の並びに移った。通路を挟んで左側列の窓側にアラタ、通路側が祐介。ミエは右側の列から身を乗り出して話しに加わっていた。
バスは再び、他に走行する車もない大通りを快適に走る。幾度か交差点を曲がり、オフィス街からは離れるようだった。
ビルなどの高い建物から、突然天井に怪物が落ちてくる危険性を考えれば、何もない荒野でも走って欲しいぐらいだと祐介は思った。
他の二人はすでに平然としているが、先ほどの怪物との遭遇のせいで、佑介はまだまだ平常心とは程遠かった。
「金岡さ……アラタと、ミエちゃんとは知り合いだったんですか、だったの?」
祐介が訊く。
「たまに組んで仕事やるんすよ」
「そうそう、アラタくんは放っておくと危なっかしいから、ミエがお目付役をやるんですよ」
「仕事って、どんな?」
普通の仕事なワケはないよなと思いながらも祐介は訊いた。
「地縛型、流浪型、獲物特定型、憑き物型、特にこだわりないっすかね。仕事がまわってきた時に、スケジュールにムリがなければ、基本なんでも受けてるっすよ」
「あ、もちろんちゃんとした討魔協会の仕事ですよ」
ミエがそう付け加える。
「オレら、清く正しい協会員っすからね。どこかの誰かと違って」
アラタの言葉に、祐介は自分のことを言われているのかとドキリとした。
協会員どころか討魔協会なるものがあることを知ったのは、今日の昼、奥坂支部に連れて行かれた時が初めてだ。そもそも悪霊退治なんてものが実在するとさえ思っていなかったのだ。ただの一般人である祐介は、このバスではモグリ中のモグリということになる。
だが、雰囲気からしてアラタが言ったのは、どうやら別の人物であるようだ。
その時、新たな人物が祐介たちの会話に参加してきた。
「エクスキューズミー。ヨースルに、チョッとイイデスカ?」
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