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「それが胡散臭いってんだよ!」
アラタが口を挟んだ。
「パンチやキックしかデキナイヒトにはシンジラレナイデショウ」
シヴァはそう言ってちらりとアラタに一瞥を向けるが、すぐに祐介に目を戻す。
「デモ、ユースケはドウデスカ? スーパーソナーを持つユースケだったらボクからフォースを感ジナイカイ?」
──まったく感じません
──アンタこそ、俺が何の能力もないって感じないの?
──つか何だよスーパーソナーって……
佑介の無言をどう解釈したのか、シヴァは大きなウィンクをひとつした。それからまたミエの腰に手を伸ばすと、今度はダンスをするようにくるりと互いの位置を入れ替えた。
佑介、アラタ、それにミエの三人ともを視界に収めるポジションだ。
「イイデショウ。ショウミー。ヨースルにボクのチョーノーリョク見セテアゲルヨ」
皆をまんべんなく見渡してそう言うと、シヴァはジャケットのポケットから銀色のコインを取り出した。ピカピカと光り、500円硬貨よりふた回りほど大きい。
「アメリカのハーフダラー、ヨースルに50セントコインネ」
言って親指でそれを弾く。
コインは回転しながら放物線を描いて飛び、祐介の手元に落ちてきた。
祐介は慌ててキャッチする。
「なんたか見慣れないコインですね」
ミエが佑介の掌を覗き込んで言う。
「ベガスニ行けばスロットマシーンデ使ワレテルヨ。サア、オカシイ所がナイカヨーク調ベテ」
「俺も見るっす。貸してください」
アラタが念入りに調べ、終いには前の座席の背もたれにコンコンと打ち当ててみたりもする。
「デハ返してクダサイ」
コインを右手で受け取るとシヴァはすぐに左手に包み込む。
左手を掲げる。
「フォーカス! 注目シテ」
力むように拳に視線を送る。
揉むようにして握りこんでいき、その容積をゼロに近づけていく。完全に拳を固く握りきると、今度は逆に解けるように少しずつ開いていった。
手の中のコインは溶けるように消え失せていた。
佑介は目を見開いた。ミエが「えっ」と声を漏らし、アラタが息を呑んだ。
「テレポートデス」
シヴァが空の両手をはたきながら不適に青い瞳を輝かせる。
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