第1話 異世界フォーチュン

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第1話 異世界フォーチュン

「どうか頑張って、勇者ユウト様・・・・・・」  少女サオリンは両手を前に組んで真摯に祈っていた。  アルプス山脈を思わせる風光明媚な渓谷……まるで絵ハガキに使われる写真の様な、夢の景色が其処には広がっている。  しかし、牧歌的な雰囲気とは趣が異なっていた。黒い雲が空一面を覆い尽くし、風はうなり声を上げ吹き荒んでいる。緑あふれる草原には、羊たちに代わり大挙するのは、怪しげなる集団だった。  札付きのワル。ならず者の代名詞たるオーク軍団だ。連中の狙いは渓谷の要衝地、マロン村を侵略することにある。まさに村は存亡の危機に陥っていた。  ジリジリと迫りくる魔物たちの軍勢に、非力な村人たちは為す術も無い。王都からの救援も期待できず、ただ時間だけが徒に過ぎていく。いっその事、故郷を捨てて逃げ出そうと言い出す者まで現れていた。  絶対絶命の状況下、マロン村を救わんと一人の救世主が、敢然と参上した。 「みんな、待たせたな!」  その名はユウト。職業、勇者である。  村の入り口につながるパステール大橋を挟んで対峙する。橋の上が、決戦の地となった。     
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