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「え、別に・・・・・・なにも無いけど」
「少し元気無いような気がしたから」
「そうかしら? たぶんユウト様が旅立ってしまったせいね」
サオリンは自身に言い聞かせる。
古びた食堂の看板娘のクレームなど、嘘っぱちだ。チドリが台本に書かれていない事を、勝手にアドリブで演じただけ。どうせワタシたちの関係に嫉妬して、仲違いさせようと企んでいるに違いない。
(きっと、そうよ)
サオリンは心の内を悟られまい、と賢明に取り繕った。
「元気出して、サオリン!」
ヒューイは長い尻尾を器用に振ってくれる。その可愛らしい仕草にサオリンは癒された。思わずぎゅっと腕に力が入ってしまう。
「痛い、痛いよ、サオリン~」
「あら、ごめんなさい。うっかり・・・・・・」
サオリンは思った。
ヒューイと一緒に居るだけで、どうしてこんなに暖かく心地よいのだろう、と。
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