第4章 異変

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 勇者ユウトの正体とは、実は平凡な青年に過ぎない。しかも彼は、根っからの異世界(フォーチュン)の住人ではない。何かのきっかけで現世からやって来た。転生されてきたのだ。 (だから・・・・・・)  転生エピソードは必須だ。転生されない限りは、何時になっても勇者は異世界には現れやしない。出現しようが無い。 (でも、転生されない事なんて、ありうるの?)  素朴な疑問を抱くや否や、「ああっ!」と声にならない声をサオリンはあげた。  絶句する。  思い出したのだ。頭に浮かんだのは、現世の出来事だった。 (アタシが失敗したから?)  どのようにして、ヒトは現世から異世界に転生するか?  噂によれば複数存在すると云われる異世界群。その内で《フォーチュン》場合はただ一つだけだった。 《転生アタック》である。  大型トラックによって、ターゲットとなる現世の人間を跳ね飛ばす。一見、残酷極まるアウトロー的な行為によって、相手を心身丸ごと異世界へと送り込むのだ。しかも、《転生アタック》は単なるトラックでは成功しない。《転生トラック》と呼ばれる特殊運送車両をもってしなければ、転生効果は発動されないのだ。  そして、その重要な担い手たるドライバーは、現世に生きる佐緒里本人だった。 (なんで、アタシが《転生アタック》なんて・・・・・・)  正直言えば、苦々しく思えて仕方がない。     
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