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異世界において自分は、サオリンという重要なヒロインを演じている。華々しくスポットライトに照らされる自分が、現世においては一転して汚れ役に回っている。
(どうしてよ?)
心当たりがあると云えば、初めてアプリ《ドリーム・フォーチュン》をダウンロードした際のユーザー登録に原因があったのかもしれない。
職業欄に「運送業」。
趣味欄には「ドライブ」。
と考えなしにチェック入れてしまった事だった。
《転生アタック》とは、文字通り、運転するトラックでヒトをはね飛ばすアクションを云う。
一般的に考えれば、絶対に許される行為ではない。
しかし、初めて《転生アタック》を成功させた時、佐緒里は意外な事にそれほどの罪悪感を抱く事はなかった。
なぜなら、相手は死んではいない。
たとえ猛スピードで押し寄せる大型トラックに引き飛ばされても、全くの無傷。ただ心体もろとも異世界に飛ばされるだけなのだ。
確かに、予告も無しに現世から追放されることは、一般人にとっては事実上の死を意味するかもしれない。
だが、異世界に転生される対象者は、実の処、異世界転生を密かに願っているらしい。何故か、彼らは総じてオタク青年ばかりが占めていた。
(自分から転生を願っているなんて、どういうことなのよ?)
到底、佐緒里には理解しがたい。
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