第4章 異変

4/10
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/110ページ
 異世界において自分は、サオリンという重要なヒロインを演じている。華々しくスポットライトに照らされる自分が、現世においては一転して汚れ役に回っている。 (どうしてよ?)  心当たりがあると云えば、初めてアプリ《ドリーム・フォーチュン》をダウンロードした際のユーザー登録に原因があったのかもしれない。  職業欄に「運送業」。  趣味欄には「ドライブ」。  と考えなしにチェック入れてしまった事だった。 《転生アタック》とは、文字通り、運転するトラックでヒトをはね飛ばすアクションを云う。  一般的に考えれば、絶対に許される行為ではない。  しかし、初めて《転生アタック》を成功させた時、佐緒里は意外な事にそれほどの罪悪感を抱く事はなかった。  なぜなら、相手は死んではいない。  たとえ猛スピードで押し寄せる大型トラックに引き飛ばされても、全くの無傷。ただ心体もろとも異世界に飛ばされるだけなのだ。  確かに、予告も無しに現世から追放されることは、一般人にとっては事実上の死を意味するかもしれない。  だが、異世界に転生される対象者は、実の処、異世界転生を密かに願っているらしい。何故か、彼らは総じてオタク青年ばかりが占めていた。 (自分から転生を願っているなんて、どういうことなのよ?)  到底、佐緒里には理解しがたい。     
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!