第4章 異変

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 されども、自分から望んでヒロインになった訳でも無い。前もって用意されたセリフを勝手に言わされているだけ。勇者ユウトへの想いも同じだ。本心から彼を慕っていたことなど一度たりとも無い。  ならば、いっそのこと潔く異世界から『卒業』してしまえば良い。現世にいる時にアプリを丸ごと削除してしまえば、きっと夢の中でサオリンを演じる事もなくなるだろう。  しかし、佐緒里は卒業を選ばずじまい。既に七回も《転生アタック》を遂行してまで、此の奇妙な異世界に留まり続けていた。  何故か?  サオリンは口を閉じる。疑問を抱く度に、敢えて答えを明らかにしない様に努めていた。  ただこのままで居たい。この異世界に留まり続けていたい……。  そう切に願っている。それだけだ。  やがて、日が暮れる。一日が終わりを告げようとしていた。店の片づけをしながら、ふとサオリンは窓から外を眺める。遠い屋根の上を疾走している小さな動物が目に映った。  ヒューイだ。  サオリンは口笛を吹いた。時置かずして小さなキツネはサオリンの元へと帰ってきた。サオリンは笑みを浮かべてヒューイを抱き抱える。 「おかえりなさい。」 「ただいま、サオリン」   就寝前、サオリンはヒューイに紅茶を煎れて上げることが日課だった。ヒューイは、ミルクティーとジャムパンを残さず平らげた。サオリンは優しい口調でキツネに語りかけた。     
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