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「最近、魔物が多くなったきたし、夜になれば魔物菌もたくさん飛び交うわ。ヒューイも気を付けてね」
「うん、でも大丈夫だよ」
キツネは尻尾を可愛げに振って応じてくる。その足の速さに追いつくものは此の世界には存在しない。何か危険があっても即座に逃げられる事をサオリンはよく分かっていた。それでも心配してしまう。心の何処かで、残っている為かもしれない。前回の物語の最終時に、ライバル役のチドリから受けたイレギュラーなクレームが……。
『ひょっとして、魔物菌に侵されて魔物化してるんじゃないの!』
ふわぁ。
ヒューイは大きく欠伸をした。どうやら眠くなってきたらしい。輪を描く様にその長い身体を横たえた。気づけば夜もだいぶ更けてきていた。
「眠くなってきたのかしら?」
「うん」
「ヒューイ、そろそろお休みなさい」
「サオリンも眠らないの?」
ヒューイの問いかけにサオリンはしばらく黙っていたが、
「ううん、もう少しだけ起きているわ。明日の仕込みもしないといけないし・・・・・・」
「そっか」
そう言い残すや、ヒューイはスヤスヤと眠りに入ってしまった。サオリンは寝姿を静かに見守る。もう少しだけ起きていよう。ヒューイと違って自分は眠ってしまえば、自動的に現世に引き戻されてしまう。サオリンから佐緒里へと・・・・・・
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