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第3話 勇者の旅立ち
「それじゃ。ミンナ、元気でな!」
日の出は、勇者の新たな旅立ちの時に相応しかった。
一万にもなるオーク軍団の撃退に見事成功した勇者ユウト。彼は「新たな地が俺様を呼んでいる」と更なるヒャッハー行為を望むべく、村を離れることになったのだ。小さな村の広場に、村人たちは皆勢ぞろいしている。人の輪からヒロインの少女が可憐に飛び出した。
「勇者ユウト様、ワタシたちを置いていかないで!」
少女サオリンはつぶらな瞳に涙を浮かべて懇願する。だが、ヒロインの切なる願いも、勇者の頑なな野望を変えることはできない。
「悪いな、サオリン。でもな、どうしても俺様は旅立たなくてはいけないんだ。だって、俺様は戦う為に生まれてきたんだから!」
「・・・・・・ユウト様」
「オマエの焼いたジャムパン、とても旨かったぜ」
そう言うや、勇者ユウトはサオリンの頭を「良い娘。良い娘」と撫で撫でしてくれる。そのラブラブなシーンを後ろから食堂の看板娘が苦々しい思いで地団駄踏んでいる様を、もちろんサオリンは横目で知っていた。
予定通り、勇者ユウトは去っていった。
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