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第4章 異変
勇者ユウトが旅立った翌日、異世界はいつしか・・・・・・物語の始まりへと、自動的に巻き戻されていた。
中世欧州アルプス山脈を思わせる風光明媚な光景が広がる。穏やかだったマロン村から、
「魔物が! 魔物が現れたぞ!」
村人の悲鳴が響いた。
魔物菌に侵され変貌した魔物たち。
徐々にその数を増やし、村のすぐ近くまで出没する様になっていた。
しかし、今まで平和に暮らしていた村には外敵から身を守る術は少ない。精々、村の入り口に掛かる大きな石橋に土塀を積むことぐらい。遠く離れた王都に助けを求めようにも、辺境の小村にわざわざ援軍を差し向けてくれるのか、定かではかなった。
「どこかに勇者様はおらんのかね? 村を救ってくれる勇者様は!」
村長と思しき老人の悲痛な叫びに、他の村人たちは「勇者なんて都合良く来るわけないべさ」と首を横に振るだけだ。困惑する村人たちの様子を、サオリンは静かに見守っていた。
(みんな、大丈夫よ。もうすぐユウト様がやって来るのだから)
勇者ユウトこそが、村の唯一の救世主。
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