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第5話 漆黒の転生トラック
東京豊洲、倉庫街。
其処がアプリ《ドリーム・フォーチュン》が新たに指定した場所だった。
ナンバープレート《555》を付けた業務用大型トラック……通称、《転生トラック555》は重低音を響かせながら停車している。ヘッドライトが照らすその先には、白い霧が広がっていた。
もうじき夜が明ける頃、カラスの鳴き声だけが甲高く響きわたっている。
「そろそろかしら」
佐緒里は時計に目をやりながら呟いた。
指定時間まで、残り五分を切っている。
既に指定場所に先回りしている。今回は余裕があった。遅れる畏れも無い。ただターゲットが現れるのを静かに待っていれば良かった。
二週間ぶりにやってきた《転生アタック》決行日。
今度こそ佐緒里は自分に課せられたミッションを遂行させなければならない。勇者ユウトとなるべき人物を異世界へ転生させなければ……。勇者ユウトが現れない間、異世界では魔物の侵略がひた進んでいる。勇者の活躍が無ければ、本当にマロン村は滅んでしまう。
まさに村の運命は現世に居きる佐緒里の手に掛かっていると云えた。
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