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《ああ、悪かった。でもさ……1つ言っていい? 彼氏さんってさ結構真面目じゃん? でも、杏が俺と不倫しているなんて知ったらどんな顔すんだろうな~》
《……知るか》
この会話を最後に電話を切る。
不倫しているなんて知ったら……
この言葉がスーパの自動ドアが開くまで頭にリピートされた。
「……うん、うまい!」
「本当? 良かった」
裕梨の頬張る姿を見て思わず笑みが滲む。
裕梨とは2年の付き合いであり仕事は公務員をしている。
年上の彼は非常に真面目で肉体関係は一切ない。
「今日もないか……」
「ん? どうした?」
裕梨はまじまじと杏を見つめる。
「え? ああ、何でもない」
「そう? ならいいんだけど」
裕梨はビーフシチューを平らげるとソファーにもたれる。
「……小説、アニメ化したんだっけ?」
「うん、放送はもう少し先だけど」
「……杏はすごいな。俺より稼いでいるし」
裕梨のか細い声に杏は眉間にしわを寄せる。
「全く……裕梨は真面目だなあ。大丈夫、私はそんなこと気にしないし」
「杏……」
杏は急に立ち上がり裕梨の膝に座り込む。
しばらくの沈黙の中、裕梨は杏に近づき唇を重ねる。
「裕梨……続きは……」
「あ! もうこんな時間だ! 寝ようぜ寝ようぜ!」
裕梨は急に立ち上がると寝室に向かう。
「……まじかよ」
杏は目を細めるとあぐらをかき残ったビールを飲み干した。
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