第2章なしジュース

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《ああ、悪かった。でもさ……1つ言っていい? 彼氏さんってさ結構真面目じゃん? でも、杏が俺と不倫しているなんて知ったらどんな顔すんだろうな~》 《……知るか》  この会話を最後に電話を切る。  不倫しているなんて知ったら……  この言葉がスーパの自動ドアが開くまで頭にリピートされた。 「……うん、うまい!」 「本当? 良かった」  裕梨の頬張る姿を見て思わず笑みが滲む。  裕梨とは2年の付き合いであり仕事は公務員をしている。  年上の彼は非常に真面目で肉体関係は一切ない。 「今日もないか……」 「ん? どうした?」  裕梨はまじまじと杏を見つめる。 「え? ああ、何でもない」 「そう? ならいいんだけど」  裕梨はビーフシチューを平らげるとソファーにもたれる。 「……小説、アニメ化したんだっけ?」 「うん、放送はもう少し先だけど」 「……杏はすごいな。俺より稼いでいるし」  裕梨のか細い声に杏は眉間にしわを寄せる。 「全く……裕梨は真面目だなあ。大丈夫、私はそんなこと気にしないし」 「杏……」  杏は急に立ち上がり裕梨の膝に座り込む。  しばらくの沈黙の中、裕梨は杏に近づき唇を重ねる。 「裕梨……続きは……」 「あ! もうこんな時間だ! 寝ようぜ寝ようぜ!」  裕梨は急に立ち上がると寝室に向かう。 「……まじかよ」  杏は目を細めるとあぐらをかき残ったビールを飲み干した。     
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