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それから杏のスマホには祐梨の通知は入ってこなかった。
「いや、いくら忙しくてもここまで連絡がこないのは……」
杏の頭には浮気という言葉が浮かぶ。
杏と祐梨の出会いは大学だった。突然祐梨に声をかけられ、しばらく友達として接してきたが2人っきりの時告白された。
しばらくの沈黙の中、杏が出した答えはNOだった。
その当時まだ売れていない作家だった杏は林に告白されていた。
編集長と作家という関係から恋人になるまではそう遠くもなかった。
しかし、林が結婚すると言った時期……祐梨はもう一度告白をした。
しばらくの沈黙の中、杏が出した答えはYESだった。
「それから2年、祐梨とは恋人らしい雰囲気があんまりないんだよね。というか、初めて付き合った高校生見たいな関係がずっと続いているし……」
悶々としているとスマホに通知が入る。
「あ、祐梨だ」
久しぶりの祐梨のメールはデートのお誘いだった。
「ごめん待った?」
「ううん、大丈夫」
久しぶりの祐梨の表情は明るい。
「ごめんね、最近会えなくて」
「ううん、全然いいよ」
久しぶりのデートは心から楽しいと言えるほどだった。
手を繋ぐ彼の手は少し冷たいが、それが心地いい。
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