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「何がって……新婚で可愛らしい奥さんがあんたの帰りを待っているのによお、こんな作家さんの家で……」
杏の言葉に軽く鼻で笑う。
「俺だって今の状況すげえと思ってるよ。今話題の人気美人作家の横澤杏先生が俺の愛人とは」
「あほか、知り合った時は彼女だったんだけど?」
杏は林は恋人同士だった。
その当時の光景が脳裏に浮かぶ。
「なあ、杏。俺結婚するわ」
「……は?」
林の言葉に呆然とする。
「誰と? 私?」
「ちげえよ、3つ年下の子なんだけど」
林はベットから起き上がるとシャツを羽織る。
「……何? 私に別れろと」
「うん? 違う違う、報告しただけ。これからも杏とはこういう関係にしたいし」
「……最低だな」
「はは、これからもよろしくな。愛人として」
「……どうした?」
林の声に我に帰る。
「何でもない」
「本当に?」
冷静になっていた表情が少し崩れると林は杏を押し倒す。
「杏、誰の事考えてたの?」
「別に誰でもいいだろ……あんたの事だよ」
思ってもいなかった杏の返答に掴んでいた手が強くなる。
「そっかー。俺の事で頭いっぱいなんだ」
「……」
「杏、呼んでよ」
耳元で囁く林に思わず呼吸が荒くなる。
「……真檎さん」
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