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「お互いもう戻れないとこまで来てんだよ。相手は妻子持ち、彼氏持ち……それでもこうやって別れたくないって思っている時点でどちらもまともじゃねえんだよ」
杏は黙ったまま起き上がり、カーテンを開ける。
そしてベットに座ると、重い口をゆっくり開ける。
「昨日、サイン会をしてな。あんたの奥さんが子供と本を抱いて並んでいた。「ずっとファンなんです! あ、先生。もしよかったら私の子供を抱いてもらえませんか?」って嬉しそうに言ってきてな、まだ首も座っていないあんたの子供を抱いた時、感情が分からなくなった。どんな顔をすればいいのか分からずただ微笑んでいた……本当の事を言うと、私は彼氏がいるのに他の男がいる状況に快感を得ていた。しかし、このことがばれて私の顔を見て笑っている奥さんと子供の顔が別のもんになった時……私は耐えられない」
杏は朝陽を浴びながら振り返る。
「私と別れてください」
林は表情一つも変えずに着替えをすませると、そのまま玄関に直行する。
「分かった。あんたの言いたい事はよく伝わった。ただ……後悔すんなよ」
「……ああ、もちろん」
2人の会話はここで終了した。
「先生! お疲れ様です」
「え? 桃山君? 今日は別の作家さんの所にいるんじゃないの?」
打ち合わせが終わり自動ドアを出ると、今日いるはずがない桃山の姿が見える。
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