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「……桃山君、ここでいいから……ありがと。てか、あんなこと言っていいの? いくら部署が違うからって……」
「構いません」
「そ、そっか……じゃあ、帰るね」
桃山と離れマンションの自動ドアが開くと強く手を握られる。
「桃山君?」
「先生……俺、ずっと先生を手放すつもりはないですから。色んな意味で」
いつもより低いトーンで言うと、颯爽と走って行った。
「……」
杏は少し疲労感を感じつつ自分の階に着くと、ドアの前に裕梨が座り込んでいる。
「ゆ、裕梨?」
「あ、ちょっと入れてもらっていいかな?」
「あ、うん……」
部屋に入ると急に裕梨は杏の肩を押さえつける。
「ちょ……痛い」
いつもでは感じられない雰囲気に顔がひきつる。
「ねえ、杏。俺の勘違いかもしれねえけど、もしかして……浮気とか不倫してる?」
「え?」
「してるなら正直に言って欲しい」
前髪で顔が見えない為表情が分からないが、怒っているのは違いない。
杏は覚悟を決め震える口を開く。
「いた……結構前から。ごめん、最低だよね。だから縁を切るなり自由にして」
殴られるのを覚悟し目を閉じていると、なぜか笑い声がする。
今の状況が分からず目が開けると、裕梨が笑っていた。
「へえ、やっぱりいたんだ~。俺と付き合っているのに他の男がいたなんて……最高じゃん」
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