第1章りんごジュース

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 目を開くと太陽の光が目に入る。 「まぶし……」  時刻は午前8時。いつもより1時間眠ってしまった。  顔を横に傾けると林の姿はなかった。 「朝帰りって……なんて理由つけるんだ? あの人……」  少し林の事を気にしながらも立ち上がり冷蔵庫から水の入ったペットボトルを取り出すと、軽く口をつける。平日の今日、原稿の進み具合も悪くなく打ち合わせが午後からあるだけだ。 「やる事もないし、外に行こうかな……」  気分転換に外に出ると、季節はすっかり冬を迎えようとしている。  車の音、人の声。家の中では気にならない事が妙に耳に入る。 「作家になってから些細な音も気になってしまうな……いつも静かな部屋でキーボードを叩いているんだ。仕方がない……」  杏は人混みの中を颯爽と歩くとその足で喫茶店に入る。 「いらっしゃーい、てっ横澤さんじゃないか? 久しぶりだな。今日はパソコン持ってないのかい?」  店長が杏を見つけると嬉しそうな表情でこちらに向かってくる。 「ああ、今日は普通の客だよ」 「はは、そうかそうか。いつもの場所でいい?」 「いや、今日は店長と話したいな」  杏はいつも座っている端の席ではなく、カウンター席に向かう。     
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