第1章りんごジュース

4/9
前へ
/23ページ
次へ
「ご注文は?」 「あ、じゃあカプチーノで」 「はい、カプチーノね」  店長は杏に背を向け、杏はその姿をまじまじと見つめる。 「今日は人少ないね」 「まあ、こんな時間帯は少ないよ。横澤さんが最後に来た時は連休だったからね」 「連休? ああ、あの日は休みだったんだ」  杏の言葉に店長は笑みを滲ませる。 「作家さんは色々大変だねえ~。最近はどうなの?」 「最近? ああ、私の作品がアニメ化するんですよ」 「へえー! そりゃすごい」  店長の言葉に思わず頬を赤らめる。 「はい、お待たせしました」  店長の腕が杏に向かって伸びる。机にカプチーノが置かれると、杏は息を吹きながら口をつける。 「あ、横澤さん」 「はい」 「そういえばさ、あの彼氏とはどうなったの?」  店長の言葉に思わず目を瞬かせる。 「……ああ、別れました」 「ええ! そうなの? てことは今はいないの?」 「いや……新しい彼氏はいるんです」  杏の言葉に店長は思わず壁にもたれた。 「もう新しい彼氏いるの? いや~、羨ましいねえ。あの彼氏はもういいの?」 「ええ、もういいんです……」  杏は少し俯き、頬杖をつく。     
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加