第1章りんごジュース

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「ええ、そうですね。でも……林さんはどうなのですかね? 新婚さんなのにもしかして不倫とか……なさいませんよね?」  意地悪な笑みからしたり顔になると、林の顔は少し引きつる。 「もちろん、俺には奥さんがいるのでね~。そんな事はしませんよせ、ん、せ、い」  2人の会話に男性と部下は可愛い子供を見るかのように、その光景に微笑んでいた。 「先生、打ち合わせお疲れ様でした」 「あ、お疲れ様です」 「もうすぐ担当が来ますで、こちらの席でお待ちください」  男性に連れられ、杏は椅子に座る。  すっかり外は暗くなり、寒そうだ。 「今日の晩御飯何にしよう」  杏は外をぼんやり眺めていると前から足音が聞こえる。 「お疲れ様です。先生?」 「あれ? おかしいな、此処の階じゃないですよねえ? 編集長さん」 「別に俺が何処にいてもいいじゃないですか~」 「……」 「……」 「もう、やめようか」 「うん……疲れる」  杏がコップに入った水を飲むと、林は何のためらいもなく前に座る。 「おいおい、何で座るんだよ」 「え、別にいいじゃん。こういう形で会うの久しぶりなんだからさ」 「……」 「てかさ、あんな場所で不倫とかいうなよ。何気にビビったんだから……お前ドSだろ」 「ドSはあんたもだろ? 彼氏がいるだけでいいじゃねえかよ。何で浮気という言葉出すんだよ」     
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