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「ええ、そうですね。でも……林さんはどうなのですかね? 新婚さんなのにもしかして不倫とか……なさいませんよね?」
意地悪な笑みからしたり顔になると、林の顔は少し引きつる。
「もちろん、俺には奥さんがいるのでね~。そんな事はしませんよせ、ん、せ、い」
2人の会話に男性と部下は可愛い子供を見るかのように、その光景に微笑んでいた。
「先生、打ち合わせお疲れ様でした」
「あ、お疲れ様です」
「もうすぐ担当が来ますで、こちらの席でお待ちください」
男性に連れられ、杏は椅子に座る。
すっかり外は暗くなり、寒そうだ。
「今日の晩御飯何にしよう」
杏は外をぼんやり眺めていると前から足音が聞こえる。
「お疲れ様です。先生?」
「あれ? おかしいな、此処の階じゃないですよねえ? 編集長さん」
「別に俺が何処にいてもいいじゃないですか~」
「……」
「……」
「もう、やめようか」
「うん……疲れる」
杏がコップに入った水を飲むと、林は何のためらいもなく前に座る。
「おいおい、何で座るんだよ」
「え、別にいいじゃん。こういう形で会うの久しぶりなんだからさ」
「……」
「てかさ、あんな場所で不倫とかいうなよ。何気にビビったんだから……お前ドSだろ」
「ドSはあんたもだろ? 彼氏がいるだけでいいじゃねえかよ。何で浮気という言葉出すんだよ」
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