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林は杏のコップを口につけると頬杖をつく。
「なあ、今日もう終わりだろ? 俺も印刷会社行ったら直帰だからさ、家行っていいい?」
林の言葉に杏はあきれた様子を見せる。
「はあ? 今月何回来るんだよ。流石に奥さんに怪しまれるだろ?」
「別に怪しまれねえよ。締め切り破りの先生お陰で3日も家に帰らない時もあるし、今日奥さんは実家にいるし」
「ああ、そう」
林の言葉に納得していると大きな手が杏の頬に触れる。
「いつでも、杏と一緒にいたいって思っているよ」
「……」
杏は表情1つ変わらずに目を細める。
「え? 何、その表情」
「……いや、その言葉を奥さんに言えよって思っただけ」
思った表情ではない杏に林は目を逸らす。
「あ、編集長! こんな所にいたんですか……早く印刷所に行きますよ! 流石に今回は怒られるとおもいます」
「あー、はいはい」
林は気怠げに立ち上がると杏に背を向ける。
「何時に来るの?」
「うーん、10時ぐらい?」
「そ……」
その言葉を最後に2人の会話は途切れた。
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