第1章りんごジュース

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 林は杏のコップを口につけると頬杖をつく。 「なあ、今日もう終わりだろ? 俺も印刷会社行ったら直帰だからさ、家行っていいい?」  林の言葉に杏はあきれた様子を見せる。 「はあ? 今月何回来るんだよ。流石に奥さんに怪しまれるだろ?」 「別に怪しまれねえよ。締め切り破りの先生お陰で3日も家に帰らない時もあるし、今日奥さんは実家にいるし」 「ああ、そう」  林の言葉に納得していると大きな手が杏の頬に触れる。 「いつでも、杏と一緒にいたいって思っているよ」 「……」  杏は表情1つ変わらずに目を細める。 「え? 何、その表情」 「……いや、その言葉を奥さんに言えよって思っただけ」  思った表情ではない杏に林は目を逸らす。 「あ、編集長! こんな所にいたんですか……早く印刷所に行きますよ! 流石に今回は怒られるとおもいます」 「あー、はいはい」  林は気怠げに立ち上がると杏に背を向ける。 「何時に来るの?」 「うーん、10時ぐらい?」 「そ……」  その言葉を最後に2人の会話は途切れた。
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