第2章なしジュース

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第2章なしジュース

《杏、今日会いに行っていい?》 《うん、いいよ。なんか食べる?》 《そうだな~、ビーフシチュー食べたい》 《ふっ、分かった。じゃあ7時で……》  電話を切ると杏はソファーから起き上がる。  外は雨が降っており、買い物に行くのには最悪の状況だ。 「裕梨(ゆうり)と会うのは久しぶりだな……」  杏は重い腰を上げ出掛ける準備をする。 「えっと、財布持った……エコバック持った……あとスマホ」  スマホがある事を確認するためカバンから取り出すと、タイミングよく鳴り響く。 「いや、タイミング良すぎだろ……」  杏は画面を見ると耳に当てる。 《……仕事中じゃないの? 林さん》  電話の相手は林だ。杏はドアにもたれると首を傾げる。 《今は休憩中。ねえねえ、今日家行っていいい?》 《あー、ごめん。今日はダメ》 《……もしかして彼氏?》 《そう、今日会う約束してるから》 《……ふーん、俺も杏のご飯食べたいな~》 《あほか、今日来たら修羅場になるぞ》 《はは、そうだな》 《……もういい?》  杏はドアを開け、鍵をかける。     
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