0人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
定期的に隣接する墓地で御火は香を焚きます。
こうして、澱みが溜まりやすい墓地も清浄に保つのです。
「ただいま、御火さん」
「早速だけど、どうだった?」
香の煙さえフィルターのように纏った御火さんにはこのまま見惚れてしまいそうなくらい。
昼間の話をするのを躊躇うけれど、御火さんの関わる事柄、何もなかったと誤魔化すわけにもいかないのです。
「たちの悪い嫌がらせを受けているみたいです、私が行った時にも血文字で書かれた手紙を見ました」
「血文字……蟲毒か?」
「そこまで凝ったものではなかったですけど、数種類混ざっていたようでした」
「数種となると出し手はかなり病んでいるかな」
「放っておくと危険かも知れません」
「見当は付いているのか?」
「切手がなかったので直接ポストに投函したようです、そこから推察できる範囲ですと最低限、沙織さんと面識があるか接触がある人でしょう」
「結構範囲が広いな、そうだ、明日は学校休んで張り込みをしろ」
「さすがにサボリは無理ですから、行くなら御火さんだけでお願いします」
実際、お寺の娘がサボリというわけにはいきません。
「あたしが?」
「私用で学校休むと父さんに起こられますし、張り込みなら私より御火さんの方がバレにくいでしょう?」
「あーあ、最近はそうやって厄介事を押し付けるんだ、昔は何でも言うこと聞いてくれてたのにさ、鈴音も俗世に汚されたか」
「私は学生としての責任を果たすだけです、それに小さいころは修行だとかいって無茶な事をさせて楽しんでただけじゃないですか」
「はいはい、説教は十分受けて来たからもいい、あたしが行くよ」
「学校の強化授業が終わってから、私も手伝いますから」
「当然よ、実力行使となったら鈴音の力が必要だからな」
「そんな事態にならない事を願います」
妙なやる気を高めている時の御火さん……、色々な意味で放っておくわけにはいかないのです。
最初のコメントを投稿しよう!