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私の下校、帰路は概ね夕日が沈む方向へ進みます。
それは、西方信仰を意識して建てられ、本堂の仏様が西を背にしている。
そんな寺院が自宅の一部だからです。
大きくはなく、寺社にしては小規模な造りで、知る人ぞ知ると言ったような存在です。
今の時代では、知る人が居て下さるだけでも恵まれているのかも知れません。
そんな、寺院の境内を抜けると私の暮らす住居があるのですが、
「よう鈴音、以外と早かったな」
呼び止めたのは御火(みか)さん。
いつも夕刻は裏のお堂にいるはずなんですが、
「御火さん、今日は本堂で焚いてたんですか?」
「まぁね、鈴音たちの変わりにお客さんの相手をしてたんだよ」
「そういうことは父さんに任せて下さい」
「しょうがないだろ、向こうから声かけてきたんだから」
「それってまさか……」
御火さんは見える人には少女として見えるけれど、御火さんが意識して可視化しないと普通は見えない存在、
「あぁ、随分と厄介事を溜め込んでるみたいだったよ」
不敵とも取れるお顔で私の肩を叩くと事情説明が始まる。
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