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夕刻より少し早い時間。
御火が本堂脇から抜けた小さなお堂で火を炊いている。
「くすみがある、木々も弱ってきているのか、それとも混ぜ物か?」
その後ろから1人の学生らしき女性が声をかける。
「あの、ここの関係者の方ですか?」
御火は少々不思議な顔で相手の視線の先を読む。
「あたしの事?」
「はい、他には誰も見当たらなくて、もしかしてお邪魔でしたか?」
「構わないよ、それよりわざわざ人を探していたということは何か用があるんじゃないの?」
「お守りが欲しかったんですが……」
「あんたも厄除けか災難除け?」
「はい、ここのお寺の厄除けは効果があると噂を聞いたものですから、でもやはり厄難がついてるように見えますか? 私……」
「真剣な面持ちでここを尋ねる人の殆どは厄除け災難除け目当てだからね、ちょっと本堂で待っててよ、これが済んだら行くから」
「そんな、お忙しいなら改めて伺いしますから」
「大丈夫、あたしの仕事はこれくらいしかないし、正孝と鈴音、あーここの管理もまだ暫くは帰って来ないから他に人手がないんだよ」
「では、お願いしていいですか?」
「あぁ、但し危ないからここには戻ってこないこと」
「はい、分かりました」
女性は本堂の方へ向かう。
「さて、仕上げるか」
御火が気合を込めると炎が立ち上り御火を包む。
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