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本堂前に置かれた腰掛に座り待つ女性に御火が声をかける。
「待たせたね、開いてるから中で待っててもらってよかったのに」
「部外者が上がっていいのか分からなくて」
「上がるだけなら自由さ、立ち入り禁止の区切りはしてあるからそれだけ気を付けてもらえばね」
「そうなんですか?」
「防犯で閉めるところも多くなったけど、閉ざされた場所にするのはここの住職の趣味じゃないらしい」
御火は本堂奥の棚の鍵を開けてお守りを取り出す。
「お守りだったね、500円になるけどいいかな?」
「はい」
御火が二色のお守りを見せる。
「色はどっちにする?」
「赤い方を」
「はいどうぞ、お代は賽銭箱に入れてね」
「はい」
「そうだ、待たせた代わりに祈願もやっといてあげるよ」
「いえ、それほど待ったわけでもありませんし」
「寺に来ておいて厚意を断るなんてバチが当るよ」
「でも、私はこれで十分ですから」
「もしかして、勧誘みたいに思ってる?」
「そういうわけでは……」
「この寺見てご覧よ、人の弱みに付け込んで荒稼ぎしてるような怪しい団体に見える?」
手入れはされているが豪華さはない。
「いえ、そんな風には見えませんね」
「でしょう、だから大丈夫だって」
「では、お願いします」
「じゃあ、これに名前と住所、書いてくれる」
「分かりました」
女性は渡された用紙に名前、小倉沙織から記入する。
「すぐに効果がないからって、無茶しないようにね」
「はい、ありがとうごさいました」
佐織は書き終え丁寧なお辞儀をして帰路につく。
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