第1章

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「…あなたが、…喋ったの?」 ーーーー幼子。1人は寂しいか? 「…寂しいよ。わたしもお父さんとお母さんたちのところに行きたい」 死にたい、というよりも、大好きな父と母に会いたいのが一番だった。両親がくれた温もりに抱きしめられたかった。 ーーーー幼子。わたしがカゾクになってやろう。 「家族…? あなたが?」 声は祠から聞こえて来るというより、頭の中に響いて来る、と表現したほうが正しい気がした。 「…あなた、だれ」 ーーーー我はhbだおしぇうおt。 「???」 ーーーー我はじきに消えてしまう。お前が我の妻になってくれれば、我は生きながらえることができる。お前は家族が欲しいのだろう? ならば、我らの利害は一致した。 「妻? あなたと結婚するってこと?」 ーーーーそうだ。我と盃を交わし、我とめおとのちぎりを結べ。 「…やだ、だって、あなた、幽霊とか妖怪とかでしょ? わたし、…怖いの嫌いだもん」 ーーーー我は祀られた神なり。付喪神や物の怪などと一緒にするな。 「神様…? 神社にいる?」 ーーーー神位は下がるが同様のものだ。 「神様なんだ…」 ーーーー幼子。お前が我と盃を交わしてくれるなら、お前を助けよう。 「…お父さんとお母さんは?」 ーーーー肉の殻が壊れ、よみじを逝ってしまった者を呼び戻すことはできん。幼子、我がお前にできることはお前を生かす手助けだけだ。祀られなくなった神の力はひどく脆弱だ。今すぐお前を此岸に送っていってやりたいが、我は既に力ある者に語りかけるだけの存在となってしまった。 「…助けてくれるの?」
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