Lesson.3 結婚《そこ》に愛はない

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** 私と絵里さんは、ターゲットのすぐ近く、会話が聞き取れる程度の距離まで接近することができた。 いまだ絵里さんの目的は分からなかったが、私は黙ってベンチのふたりを見守った。 「寒くない?」 「うん」 奈緒は噴水を眺めながら微笑んだ。誰もいない公園はひっそりと息を沈めていて、噴水だけがざあざあと音を立てていた。彼もしばらく噴水の音に耳を傾けていたが、それから間もなくしてふたたび口を開いた。 「ねぇ」 彼は声のトーンを少し落とした。彼女は先ほどまでの甘い空気とは違うそれを察知して、彼の瞳の奥を覗いた。彼はまっすぐな彼女の瞳に一瞬言葉を失ったが、その声のトーンを変えることなく続けた。 「"ナオ"って本名なの?」 彼女はちょっとだけ首を傾げた。
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